モハメド アリ 逝く

 

2016/06/06  朝日新聞 天声人語 コ ピー

 

プロボクシングの人気者になった黒人青年が、名前をカシアス・クレイから、イスラム風のモハメド・アリに変えた。白人優位を批判するイスラム教のグループの影響を受けて、改宗していた。奴隷にされた先祖が所有者から与えられた名前を返上する意味もあった▼改名は、強い批判にさらされる。彼は後に、作家のトマス・ハウザー氏に悔しそうに語っている。「もし俺が白人の思うようなもっとアメリカ的な名前が欲しくて……スミスとかジョーンズとかに改名したなら、誰も文句はつけなかったろうよ」▼74歳で亡くなったモハメド・アリ氏は、間違いなくアメリカの英雄であった。弾むようなフットワークと鋭いパンチで観衆を魅了し、みたび王座に就いた。しかしその生涯は、自分の国との距離を測りかねていたように見える▼アマチュア時代の1960年、ローマ五輪で金メダルに輝いた。誇らしく帰国したものの、レストランでは「黒人はおことわりだ」と言われた。屈辱と衝撃と孤独を感じたと、自伝にある▼ベトナム戦争に反対して徴兵を拒否し、王座を剥奪(はくだつ)された。人びとが無益に死んでいくのが耐えられなかった、と後に語っている。「すべての人が考えるべき抵抗だった……自由とは自分の信念を守ることができるということだ」▼アリ氏はかつて、試合相手をこきおろす弁舌で知られた。それは社会や政治にも向けられた。もう一つの重く鋭いパンチを、アメリカはどれだけ真摯(しんし)に受け止めてきただろうか。

勇者の言動は美化され、重みとしていつまでも消えることはない。
自己の信念ということで軍役義務を拒絶、もちろんルール違反だから制裁は受けざるを得なかったが、その信念と行動はいつまでも勇者のものとして語り継がれる。

過去の奴隷制度、黒人差別。。。 

アメリカに、世界に、強烈なパンチを喰らわした男、モハメド アリ。

人間の価値。  

何故だか、アルキメデスが頭に浮かんできた。

 

 

 

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